性同一性障害

Gender identity disorder

by Minoru IKEDA    

 1. 性同一性 Gender identity

 自己の性別に対する自覚と確信。一人の人間が男性,女性もしくは両性として持っている個性の統一性,一貫性,持続性をいいます。どの程度まで統一されているかは問題ではありません。

 2.性役割 Gender role

 人が他人あるいは自分に対して,自分が男性,女性もしくは両性のいずれかであることを表すために示すあらゆる言動をいいます。性同一性を公にして表現することです。

 3. 性同一性障害 Gender identity disorder

(1)性転換症 Transsexualism

  ICD-10(世界保健機構が出版している診断ガイドライン)

  異性の一員として暮らし,受け入れられたいという願望であり,通常,自分の解剖学上の性について不快感や不適当であるという意識,およびホルモン療法や外科的治療を受けて,自分の身体を自分の好む性と可能な限り一致させようとする願望をともなっている。このような性転換的な性同一性が少なくとも2年間持続している。

  DSM-。-R(米国精神医学会が発行している診断ガイドライン)

自己の属する性について持続的な不快感と不適切であるという感覚
自己の第一次および第二次性徴から解放されて,異なる性の性徴を得たいという考えが,少なくとも2年間持続している
思春期を過ぎている

(2)小児期の性同一性障害 Gender identity disorder of childhood

  ICD-10

通常,小児期早期に(そして常にはっきりと思春期以前に)最初に明らかになる障害であり,自らに割り当てられた性に関する持続的で強い苦悩によって特徴づけられ,それとともに異性に属したいという欲望(あるいは固執)をともなうもの。異性に属する服装および/または行動および/または自身の性の拒絶に,いつも心を奪われている。これらの障害は比較的稀であると考えられ,よりしばしばみられる決まりきった性的役割行動への不服従とは混同すべきでない。小児期の性同一性障害の診断をくだすには,男性性,あるいは女性性の正常な感覚に重大な障害がなくてはならない。少女の単なる「おてんば」や少年の「女々しい」行動だけでは十分ではない。この診断はその人がすでに思春期に達している場合にはくだすことができない。

  DSM-。-R

   女性の場合

A 女の子であることについての持続的で強い苦痛,および男の子になりたいという願望を述べること(男の子であることによって得られると思われる文化的利得に対する欲求ではない),または自分は男の子であるという主張
B 1または2のいずれか
 1 正常な女性の服装に対する持続的強い嫌悪および定型的な男性の服装,たとえば少年の下着や他のアクセサリーをつけることの主張

 2 女性の解剖学的構造の持続的否認,それは以下の少なくとも1項目によって示される

   自分には陰茎がある,あるいは陰茎が生えてくるという主張

   座位による排尿の拒絶

   乳房の発達や月経を望まないという主張

C 思春期に達していない

   男性の場合

A 男の子であることについての持続的で強い苦痛,および女の子になりたいという強い願望,または,稀には自分は女の子であるという主張
B 1または2のいずれか
 1 女性に定型的な活動への囚われで,それは女の子の服を着たり,または女装をまねるのを好んだり,または女の子のゲームや娯楽に加わりたいという強い欲求と,男の子に典型的な玩具,ゲーム,活動の拒否により示される

 2 男性の解剖学的構造の頑固な否認,それは以下のうち少なくとも1項目を繰り返し主張することで示される

   自分は成人して女になる

   自分の陰茎または精巣は嫌悪すべきもの,あるいは消失するだろう

   陰茎または精巣をもっていなければよかったのに

C 思春期に達していない

(3)両性役割服装倒錯症 Dualrole transvestism

  ICD-10

性転換や外科的な変化を望むわけでなく,服装を交換することに性的興奮を伴うわけでもない,一次的な異性の一員となることを享受したい願望をもつもの

 4. 性同一性障害に表面的に近似した状態

(1)フェティシズム Fetishism

  ICD-10

性欲喚起あるいは性的満足のための刺激として,ある種の生命のない物体に頼ること,その多くは衣服や履き物のような人体の延長物である。ふつうにみられる他の例は,ゴム,プラスティックあるいは革のような,特徴としてある特殊な質感をもつものである。フェティシズムの対象の重要性は個人によってまちまちである。場合によっては,それらは単にふつうのしかたで得られた性的興奮を高めるために役立つ(たとえば相手に特殊な衣服を着せること)

  DSM-。-R

A 少なくとも6か月にわたり,生命のない対象それ自身(たとえば,女性の下着)に関する強烈な性的衝動や性的に興奮する空想が反復する(その者は,他の場合には性的伴侶と一緒に,生命のない対象を用いることもある)
B その者は,こうした衝動により行為に及んだことがあり,または著しくそれに苦しんでいる。
C フェティシュは女性に用いられる着用品,または性的感覚刺激を目的として作られた道具(たとえばバイブレーター)のみに限定されない。

このようにフェティシズムの対象は物品であり,長い髪や豊かな胸が大好きだという人をよく,”髪フェチ”とか”オッパイフェチ”などと呼ぶ場合がありますが,これらは正しい用語ではありません。

(2)フェティシズム的服装倒錯症 Fetishistic transvestism

  ICD-10

主に性的興奮を得るために異性の衣服を着用すること。これは,フェティシズムの対象となる物品や衣服を単に着用するというだけでなく,異性としての外観をつくり出すために着用するという点で,単なるフェティシズムから区別される。通常一点以上の物を着用し,しばしばかつらや化粧品を加え完全な装いをする。フェティシズム的服装倒錯症は,性的喚起と明らかに結びついていることと,いったんオルガスムが起こり性的喚起が止めば,衣服を脱いでしまいたいという強い欲望が起こることによって,性転換願望症の服装倒錯とは区別される。

  DSM-。-R

A 異性愛的男性において,少なくとも6か月にわたり,異性の服装をすることに関する強烈な性的衝動や,性的に興奮する空想が反復する。
B その者は,こうした衝動により行為に及んだことがあり,または著しくそれに苦しんでいる。
C 性転換症の診断にあてはまらない。

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